オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
相変わらず、奈々の顔はニマニマと締まりなく笑っているままだから、余計に恥ずかしさが増幅され、今すぐ穴に埋まりたい気持ちになる。

けれど、すっと真剣な顔になった奈々は言う。


「よく頑張った!感動した!」

「いや、それ、いつぞやの首相の……」

「うっさい。真面目に聞け。あたし、前に言ったよね? マコの愛は、たとえ葉司君が“オトコの娘”でも“女の子になりたい男の子”でも、そう簡単には変わらないと思うのよ、って。いっぱい迷って遠回りもしたけど、マコは自分の力で愛を証明したんだよ。自信持ちなね」

「奈々……」

「マコはいまいちピンときてないみたいだから言うけど、すごいことなのよ。だって、葉司君を丸ごと好きなんだから。恋じゃなくて、もはや愛だね!さっさと結婚しちゃえバカ!」

「……バカって」


でも、ありがとう、奈々。

奈々はまた、親友のひいき目で美談っぽく言っているけれど、ひとつ訂正をすると、みんなに後押しをされて答えを出せたのだから、あたし1人の力だけでは、けしてない。

奈々、純平、メルさん、野宮さん、葉司父、それから、叱咤激励してくれた竹山も、みんながいてくれたからこそ、あたしは葉司とも自分の気持ちとも向き合うことができたし、この約5カ月の悩み続けた日々も、全てが無駄ではなかったのだと胸を張って思えるのだ。
 
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