オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
「顔、最後までちゃんと見られなかった……」
せめて、きちんと目を見てお礼を言いたかったのだけれど、かすんでいた目がはっきり見えるようになったのは、残念ながらたった今だ。
それに、彼はもういない。
粋すぎる彼の計らいに、嬉しさ反面、あたしの心の中には申し訳ない気持ちが一気に広がる。
てか、超カッケーんですけどっ!!
もしも、具合が悪そうなあたしを電車の中で見かけたとか、電車を待っている間なんかに見かけ、わざわざお茶を差し入れてくれた、というのなら、格好よすぎるどころの話じゃない。
すでにこの場にはいない彼の本心は分からないのだけれど、年の頃、あたしと近しい年齢と思われる彼がとんでもなく大人に感じたのは、言うまでもない事実だった。
ほんと、格好よすぎる……。
「聞いてよ、奈々っ!!」
「なによ、遅刻したのに、やけに機嫌いいね」
「うん!それが、今朝さ……!」
その後、彼のおかげでめきめきと体調が回復したあたしは、大学に着くと、まず奈々の姿を見つけだし、かくかく、しかじか。
まさか、話している近くに正義マンの彼……つまりは葉司がいたことなんて全く気づかず、駅でのことを嬉々として語る語る。