オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
「ぎゃっ!やめてください!恥ずかしいっ!!」と慌てて乾先輩の手を下げさせるも、時すでに遅し状態のあたしの周りは、ヒューヒューとはやし立てるノリノリの学生ばかり。

ステージ上でも、司会役の学生と彼が「よかったですね!石田さん、来てくれましたね!」、「はい、嬉しいです!」と声をマイクに乗せて嬉しそうに会話をしていて、とうとう逃げるに逃げられなくなったあたしは、ただ、恥ずかしさに耐えながらうつむくしかなかった。

けれど、乾先輩に「ちゃんと見てあげて」と優しく言われ、しばし考えたあたしは、仕方なく薄目を開けてステージの彼を視界にとらえる。


「それでは、愛の告白を!」


すると、そう言われた彼は、ステージの端にはけていく司会役に軽く頭を下げると、まずこちらに向けて、再度、深々と頭を下げたのだ。

これほど礼儀正しいというのに、なぜ告白の場をここに選んだのだ、さっぱり分からん……。

不信感、というわけではないのだけれど、いくら思い返しても彼に見覚えはないし、こんなに大勢の前で告白をしようだなんて思った彼の気も知れず、これから告白をされようという、本来ならドキドキする場面のはずだというのに、ちっともドキドキなんて、しやしない。
 
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