オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
その思いで、あたしはマイクの前に立ち、まん前の席で、両脇を奈々とメルさんに挟まれ、複雑な顔というか、今にも泣き出しそうな顔をしている愛菜にスッと視線を合わせた。

そんな顔をしないでよ、愛菜。

あんた、モッテモテなんだから。

どんな葉司でも好きだ、ってやっと気づけたんだから、こういう場で告白ができることも、元カノが今さらなんだ、って視線の向かい風も、ここにいるみんなにあたしの気持ちを聞いてもらえることも、全部全部、嬉しいのよ。


「……ただ、一言だけ、言わせてください」


水を打ったようにシーンと静まり返る中、そう言った、若干震え気味のあたしの声だけが、マイクに乗って店内に響き渡る。

ゴクリと唾を飲み込むと、いよいよ告白だ。


伝えよう、葉司そのものが好きだ、って。

この5カ月間は、葉司を好きだと再確認するための期間でもあったのだ、今、あたしは本当にそう思っていて、その中で起こった様々な出来事も、全てが今日に通ずるための大事なステップだったのだと胸を張って言いきれる。

けれど……。


「もうやめてくれよっ!」

「……え」

「マコ、もういい。もういいから、こんな俺のために頑張らないでくれよ。俺のほうが、マコのことを万倍好きなんだから……っ!!」
 
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