オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
野宮さんはそう言い、余裕で6人は座れそうなほど広い車の後部座席のドアを開ける。
けれど、あたしたちはお互いに顔を見合わせ、待たせてしまって申しわけないのだけれど、先ほど、3人で決めたことを伝えた。
「ごめんなさい、野宮さん。乗るのは奈々だけでもいいですか? 葉司とあたしは……ね?」
「うん。すみません、野宮さん」
あたしのあとを引き継いだ葉司も、申しわけなさそうに野宮さんに頭を下げる。
「さようですか……」と、若干、悲しそうに眉を下げた野宮さんは、しかしすぐに何か思い当たることがあったらしく、奈々に微笑みかけると「夏目様、お乗りくださいませ」と、奈々の手を取り、車の中へとエスコートしていく。
「じゃあ、マコ、葉司君、また大学でね。野宮さん、あたし、メルさんのお屋敷に行ってみたかったんです!連れて行ってくださいっ!!」
「かしこまりました」
嬉々として車に乗り込んだ奈々は、そう言い、野宮さんに開けてもらった窓から身を乗り出さんばかりに手を振りながら、雑踏の中をメルさんのお屋敷に向けて消えていった。
メルさんのお屋敷に行ったと話をするたび、奈々は本当に悔しがっていたし、羨ましがってもいたから、願いが叶ってよかった、よかった。