オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
ミニステージではアイドルさながらの歌とダンスを披露し、お客さんのほうもまた、大盛り上がりで合いの手を入れている。
「……なんかすごいね」
「でも、ちょっと楽しそうだよね」
「うん」
そしてあたしたちは、その動画の迫力になんだかんだと言いつつも興味をそそられ、4分弱の歌や踊り、合いの手に終始釘づけだった。
葉司が実際に歌と踊りを披露しているかどうかは分からないけれど、『ねこみみ。』からの帰り際に聞こえた男性客の親しげな声から想像すると、有料のサービスはしていると思う。
そうやって得たバイト代をデート費用に少なからず充てていた、というのも、おそらくあたしの深読みのしすぎではないだろう。
なんだかビミョーな気分だ。
「ああ、もう……」
「ん? どうした、マコ」
「“オトコの娘"を調べれば調べるだけ、ますます葉司のことが分からなくなっていくよぉ」
「マコ……」
テーブルにカエルのごとく突っ伏しながら、若干泣きそうになった目で奈々を見上げる。
騙されていたとか、裏切られていたとか、そういうふうに思うこと事態、本当はしたくないし被害妄想なのもよく分かっている。
けれど、ファミレスのほかにもこういうバイトでデート費用を稼いでいたと分かって、あたしなりにショックが大きかったことは確かだ。