オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
「……あたし、冷静になるためにも、葉司とちょっと距離を置こうかな、なんて思う」
「えぇっ!?」
「なにさ、あたしが自分で考えるしかない、って奈々も言ってたじゃない」
「そうだけど、なんでまた急に……?」
「うん」
バイトを掛け持ちしていたことがそう思った直接のきっかけ、というわけじゃない。
たぶん「“オトコの娘"なの」とカミングアウトされた瞬間から、距離を置いて冷静にならなければ、と直感的に感じていたと思う。
ただ、思っていても、それを認めたくない気持ちや言葉にするのが怖かっただけなのだ。
言えば言ったで案外気持ちが軽くなるもので、このまま堂々巡りでうだうだと悩み続けているよりは、少しは前に進めるような気がする。
「そっかぁ……。マコがそう思うんだったら、あたしはそれが正確なんだと思うよ」
それを話すと奈々からはそんな力強い言葉をもらって、あたしは誰かから自分の考えを後押ししてほしかったのだとよく分かった。
ちょっと薄情で、自分が面白そうだと思ったことには首どころか全身で突っ込んでいく奈々だけれど、こういうときは頼もしい。
さすが、腐っても親友だ。