オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
愛菜と繋いだ手にぐっと力を込め、横顔を見上げながら、あたしはそう言う。

いろいろなことを乗り越えて、再びつき合いはじめたばかりの頃は、あたしたちの身近な人たちさえ、あたしたちのことを分かってくれていたらいいと思っていたのだけれど、そういうことでもないのだと、ようやく分かってきた。

心理カウンセラー……ゆくゆくは、性同一障害を専門に扱うカウンセラーになりたい、と言っても、ことわざもパッと出てこないようなアホさゆえ、無謀だと笑われるのがオチだと思う。

けれど……。


「俺は、マコがやりたいことを応援するよ」


急に“俺は”なんて男の子口調になって言い、あたしをそっと包み込むように手を握り返してくれる愛菜に、どうしても今、言いたくなった。


「……ねえ、もしもあたしが、カウンセラーを目指したい、って言ったら、葉司は笑う?」

「笑うわけないじゃん」

「ありがと!!」


あたしたちは、まだまだ、これからだ。

雨降って、地固まったあとの道は、きっとあちこちにぬかみができていると思うけれど、その道を、葉司と一緒に、バシャバシャと勢いよく泥水を跳ね上げながら走っていこう。

あたしたちなら、何があっても大丈夫。

そういう絆がちゃんと手の中にあるのだから。
 
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