オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
「うん、ありがとうね、奈々」
「いやいや、とんでもない。……ていうかさ、さっきからマコ、お礼言いすぎじゃない? やめてよね、胸が痒くなるから」
「むふ。ありがとうー、奈々!」
「うわっ、気持ち悪っ」
これからもっと悩んだり迷ったりする日々が待っているのが目に見えているのだ、先にまとめて言っておいても、バチは当たるまい。
あたしだって、何度も言うとさすがに恥ずかしいし、すでに胸どころか全身が痒いさ。
お互いさまだ。
そうして奈々に元気をもらい、葉司に「ちょっと距離を置きたい」と伝える決心を固めていると、なにやら見覚えのある顔が近づいてきた。
「やあやあ、お2人さん。今日はここでランチタイムでしたか。珍しいじゃん、大学の外でメシなんて。いつも学食か弁当なのに」
もうお昼休みも終わりに差しかかっているのに大盛りのセットメニューを2セットも持って現れたのは、葉司の友だちの葛西純平。
バスケ部に所属していて、ガタイがよく背も高いため、ディフェンダーとして絶賛活躍中。
同時に彼女も絶賛募集中なのだけれど、顔もなんだかゴリラみたいで、女の子のほうから声をかけられることはまずなく、純平のほうから声をかけても怖がって逃げられ……。