オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
そうして、人だかりの真ん中で、人目もはばからず、やいのやいのと言い合っていると……。


「うぎゃっ!!」

「……マ、マコ!?」


突如、あたしの体が吹っ飛んだ。

……いや、これも、正しくは突然誰かに手首をつかまれ強い力で引き寄せられた、というのが状況説明的には合っている。

ただ、あまりにも突然すぎて、あたしの感じ方が“吹っ飛んだ”ようなものだったのだ。


「やっと見つけたわ。ちょっとつき合ってほしいところがあるの。行くわよ、まことちゃん」

「えっ、えっ、きゃー!奈々~!!」

「マコ!!」


そんなことを思っている間に、あたしの手首をつかんだ相手はそう言い、人だかりをかき分けながらズンズン進みはじめた。

引っ張られるあたしは、こんなに大勢の人に見られて恥ずかしさで泣きそうになりながら、しかし抵抗すらできないため、転ばないためにも足を前に出し続けるしかない。


この声、このバラの香り、ああ、やっぱりあたしを待っていたのはメルさんだったんだ……。

そう理解したときには時すでに遅く、あたしは人だかりを抜けてしまい、取り残された奈々は口をあんぐりと開けて呆然としている、そんな構図が出来上がってしまっていた。
 
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