オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
今日のあたしのバッグは持ち手のところがチェーンで出来ているお気に入りのバッグで、奈々のコートは、アルパカだか羊だかの毛で作られているモコモコのもの。
さっき「帰ろう」と言ったときにでも、チェーンの継ぎ目が毛に絡まってしまったのだろう。
とんだ災難だ。
「ちょっと!それ、あたしだけのせいじゃないじゃない!マコだって、なんでそんな変なバッグで大学まで来てるのよっ!」
「だってお気に入りなんだもん、今日はこのバッグの気分だったんだもん!」
「あたしだってお気に入りのコートよ!」
とたんにけんか腰になるあたしたち。
普段ならば、お気に入りなら仕方ないよねー、とここまでけんか腰になることはまずなく、引くのはたいてい、あたしなのだけれど。
今日に限ったことで言えば、帰ろうと言ったのに聞き入れてもらえず、しかも避けたいところにズンズン連れて行かれ、おまけに情緒が不安定なため、引き下がる気は毛頭なかった。
奈々も奈々で、もともと負けん気が強いところがあって、今みたいに自分の好きなものをけなすような言い方をされると大変よろしくない。
不可抗力でこうなってしまい、どちらが悪いというのもないけれど、どうやら今日は、お互いさま、というわけにはいかないようだ。