オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
な、なんてデンジャラスな……。

家の庭にクマが出ることもそうだけれど、まさかそのクマを飼い、挙げ句に揉み合いになって付いた傷だと誰が思おう。

もともと強面の顔の野宮さんなのだ、頬に傷があればさらに拍車がかかり、そっち方面の職業の人だと誤解されることも多かったはずだ。


「野宮さんも大変ですね……」

「いえ、お嬢様に尽くすことが私の唯一の生き甲斐ですから。勲章だと思っております」


そう言って、野宮さんは誇らしげに頬の傷を撫でると、またわずかに口元に笑みを作った。


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次の日。

あたしは、葉司と話をしようと放課後になるのを待ち、大学近くのカフェに呼び出した。

事前に連絡を入れると、今日はファミレスもオトコの娘カフェのバイトも休みだそうで、すぐに来られるということだった。


コーヒーとサンドイッチで小腹を満たしつつ、葉司が現れるのを待つ。

するとほどなくして店のドアが開き、約3週間ぶりに葉司があたしの前に姿を現した。


「ごめんね、急に呼び出したりして。来てくれてありがとう。とりあえず、ここ、座って」

「……うん」


さて、話をはじめよう。
 
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