オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
葉司の瞳から、わずかに動揺の色が伺える。

今まで話していなかった家庭の事情を、こういう時期やタイミングであたしに知られてしまったのだ、無理もないのではないかと思う。

あるいは、いろいろと激烈すぎるお父さんの顔が浮かんで、オトコの娘の一面を持っていることに対しての後ろめたさや、打ち明けたらどうなるんだろう、といった恐怖心が、一瞬にして脳裏に渦巻いたのかもしれない。

それでも、どうしても話をしなければならないことを、どうか葉司には許してほしい……。


「あのね、葉司」

「ん?」

「なんで“オトコの娘”だったの?」

「……え?」


メルさんからオトコの娘化の全容を聞いて、部屋に帰ってからもずっと考えていた。

けれど、どうしても分からないことがある。

もしもお父さんへの反発心からぷつりと切れたのだとしても、どうして切れた糸の先が行き着いたのが“オトコの娘”だったんだろう。


ヤンキーになったり、引きこもりになってしまっては、あたしは葉司と出会うことさえできなかったわけなのだけれど、ほかにもう少しなかったのかな、とも思うわけなのだ。

その理由が、あたしは知りたい。

そう説明すると。
 
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