オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
「メルから聞いて、知ってるとは思うけど」


葉司は苦虫をかみ殺すような、なんとも苦い顔をして前置きをすると、こう語りだした。


「俺の親父、本当に厳しい人でさ、女は死んでも守れ、っていう口癖もそうなんだけど、妹たちがちょっとでも泣くと、やれお前が泣かしただの、やれ兄貴のくせに何やってんだだの、全部俺のせいにされてたわけよ」

「うん」

「母親の体が弱かったこともあって親父は厳しくしたんだ、今はそう思うことにしてる。でも本当は俺だって親父に甘えたかったし、妹たちと同じように扱ってほしかった」

「うん」

「それで、ある日閃いたんだ。女の子の格好をすれば誰かが優しくしてくれるかもしれない」

「え、そ、そうなの? あたし、お父さんに優しくしてもらいたい一心からのオトコの娘化なのかと思ってたんだけど……」


あたしなりに考えたのが、それだった。

昨日、メルさんと話をして、葉司がオトコの娘化した理由が分かった気がしたと思ったのは、そういうことだったのだ。

けれど葉司は、違うと首を振る。


「親父にそうしてもらうことは、もうとっくに諦めてたからさ。ほかの誰かを当てにするしかなかった。それくらい、どうにもならないところまで追いつめられてたんだよ」

「そっか……」
 
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