オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
今でも葉司の根元にある一番の思いは、おそらく“甘えたい”なのだろう。
“甘えられる大人”を親に求められなかった、という生い立ちは、あたしたち子ども目線から思うと、とても辛いし、悲しい。
あたしの親も、しつけや礼儀にはかなり厳しいほうだと思っていたけれど、葉司の場合は、あたしのそれとは種類が違う気がする。
どう説明したらいいのか……。
すぐには浮かんでこないけれど、どんなに厳しい親でも、最後は必ず味方になってくれたり、傷ついたときに胸を貸してくれたり、そういうことをしてもらえないまま、葉司は成人を迎えたことだけは理解したつもりだ。
「ごめん、こんな話!忘れて!」
あたしが相当思いつめた顔をしていたのか、葉司は明るい声で言って、食べかけだったあたしのサンドイッチに手を伸ばす。
「実は、マコに何を言われるかと思って、昼飯が喉を通らなかったんだよー」なんて言いながら、むしゃむしゃと平らげていく。
そんな葉司に軽く笑うも、やっぱりあたしは、オトコの娘化に引っかかりを感じずにはいられなくて、再度、聞き直した。
「でも、なんで“オトコの娘”だったの? 本当は女の子に生まれたかったとか、心と体がちぐはぐだとか、そんなこと、思ってない?」