オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
すると……。
「あら、お久しぶりね、まことちゃん」
「ひぃぃっ!!」
ふわりとバラの香りが漂ってきたかと思うと、次の瞬間には耳元でそう囁かれ、あたしは思わず小さく悲鳴を上げた。
メルさんがこの時間、カフェにいるかは分からなかったし、会えないことも十分あるだろうと思っていたのだけれど、こうも簡単に会えてしまうと、声だって出るというものだ。
びび、びっくりしたぁ……。
「お隣の子は、お友だちかしら? 今日はずいぶん雰囲気が違うみたいだけど、愛菜の様子を見に潜入してきた、ってところかしら」
「えへ、えへへ……。絶対バレないって自信があったんですけど、よく、あたしだって分かりましたね。……その通りです。気になって、愛菜の様子を見に来ちゃいマシタ」
「そうなの」
「はい。あ、この子は親友の奈々です」
ひそひそと小声で会話をする。
今日も相変わらず、圧倒的な存在感を放っているメルさんだ、いくら小声で話したところで、どうしたって目立ってしまうから、あまり意味はないことなのかもしれない。
けれど、開店早々、会えたのだ。
愛菜が元気そうなのも確認したことだし、バレてしまう前にお礼と謝罪を伝えて、ここはそそくさとおいとまさせてもらおう。