オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
「あの、メルさん。愛菜から聞いて、もうご存じかとは思うんですけど……」


奈々とメルさんが軽く「どうも」とあいさつ交わしたところで、そう話を切り出す。

開店したばかりでお客さんはまだ数人程度だけれど、愛菜に気づかれてしまっては元も子もないため、早々に伝えてしまいたい。

するとメルさんは、ちらりと愛菜のほうへ視線を向け、すぐにまたあたしに視線を戻した。


どうやら愛菜はお客さんの相手に集中しているようで、今度はオセロをしている。

これだと、頭を使う上、手元に目線が集まるため、すぐに気づかれることはないようだ。


「ええ、聞いているわ。なんだか、あたしのせいで関係をこじれさせてしまったみたいで、あなたには謝らなくちゃと思っていたの」

「いえ、そんな……。それで、話の続きなんですけど、すごく良くして頂いたのにこんな結果になってしまって、本当にすみません。今までのこと、感謝してます。今日はそれを言いに来たんです。ありがとうございました」


そう言って頭を下げると、メルさんはあたしの頭に優しく手を置き、「わざわざありがとう」と、少し切なそうに言う。


「でもね、まことちゃん。やっぱりあたしは、愛菜はちゃんと“ストレート”な男の子だと思うわよ。それだけは言わせてね」
 
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