オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
これじゃあ何のために変装したのだ、という呼びかけにも「ノリで」と答えられてしまって、メルさんもメルさんで「バレないわよ」などと無責任なことを言いはじめ……。

あたしは大いに腹を立てながら、しかし渋々、席に座り直すしかなかった。


……正直に打ち明けると、やっぱり、別れて間もないゆえ、愛菜のことが気になって気になって仕方がなかったのだ。

けれど、素直にそう言うとニヤニヤされそうだったため、怒っているふりをして言う。


「あたし、知らないからね。バレたら、奈々とメルさんのせいなんだからっ!」


そうして1時間ほど、2人がわいわいと楽しそうに話をする傍ら、途切れることなく指名され続ける愛菜の様子をこっそり見ていた。

幸い、お客さんがこの様子なので、愛菜があたしたちに気づくことはなく、単なるあたしの取り越し苦労に終わることになる。


ただ、どうしても。

気になることがあって、すごく盛り上がっているところに邪魔をしてしまって申し訳ないのだけれど、2人の間に入り、メルさんに尋ねた。


「ねえ、メルさん。あのお客さん、なんか、ほかのお客さんと違う気がします……」


するとメルさんは美しい顔をとたんに歪める。

……どど、どうなさったの!?
 
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