オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
いいのだ、あたしは。
愛菜が元気で働いていて、メルさんにも会え、伝えたいことを伝えられたのだから。
今さら、愛菜とどうにかなりたい、などという気持ちは、持ってはいけない……。
「じゃあ、帰ろうか、奈々。メルさん、本当にありがとうございました。あたしがお願いできることじゃないんですけど、愛菜のこと、これからもよろしくお願いしますね」
そう言って、あたしは席を立つ。
いつの間にやらお客さんもだんだんと増えてきていて、メルさんと長く話していると、かえって目立ってしまい、愛菜に気づかれかねない。
いや、メルさんには一発であたしだと気づかれてしまったけれど、変装には自信があった。
ただ、声はどうにもならないため、もし話し声が聞こえたら声でバレてしまう、という懸念が焦りにつながり、早くカフェを出なければ、という行動に如実に現れたのだ。
「えー。もう少しいいでしょ? バレたらバレたで面白そうだし、そもそも、悪いことをしてるわけでもないんだからさ。それに、メルさんとも、もうちょっとお話したいし」
「まあ、嬉しい」
「奈々っ!! メルさんもっ!」
けれど、2人はとことんマイペースだった。