犬と私の物語
しばらくすると雪の母である宮下恵(けい)がドア越しに姿を見せた。恵は言う。

「どうしたの?雪、こんな時間まで、なあに?その子。」


雪は心臓が冷えて、額に冷や汗を流した。
雪は言う。
「あ、あのね、お母さん…。」


恵は犬のことは何も言わずにただ、「早く中に入りなさい」と言った。


雪と恵と子犬は家の中に入り、温かいリビングでくつろいだ。

雪は意外だった。母は犬を見た瞬間驚き怒るのではないかと思っていたからだ。
だが、恵の行動は違っていた。

すやすや寝ている犬をベッドに寝かせ、暖かい毛布をかぶせて、寝かせた。そしてしばらく二人は沈黙しながら子犬を見ていた。


やがて、恵は台所に行き、雪のために暖かいミルクココアを作ってきた。
恵は言う。「外は寒かったでしょう…?これでも飲んで体を温めなさい。」


母の優しさが伝わってきて、雪は思わず泣いた。それを何も言わずに、慶はミルクココアを少しづつ飲んでいた。恵は、ふっ、と、昔のことを思い出し悲しい目を一瞬した。
雪が泣き止むと恵は話し始めた。


「あのね、雪、お母さん子供の頃、一匹犬を飼っていたの。タロウって犬をね…。」
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