犬と私の物語
まあ、人が好きになるのはほんの小さなきっかけが多いかも知れないが…。


洋介は右手で胸のシャツを握りながら顔を右側にそっぽを向いて、白い月を眺めていた。
冷たい風が吹き、二人は沈黙していた。

そしてその長い沈黙を破ったのが、白い子犬の甘えた鳴き声だった。子犬はトコトコと笑顔で雪のところに行った。



「クゥ~ン、ワン、ワン…」



二人は思わず苦笑した。二人の間に合った緊張が解けていく。


雪は子犬を抱きかかえ優しく頭を撫でた。
子犬は気持ちよさそうに手を舐めた。
そんな姿を見ていた洋介は近寄って、子犬に話しかけた。


「アハハ…、おまえって本当に可愛いな!よかったね、優しい人に拾われて。」


洋介は雪の方を向き真剣な顔をしながら言った。


「大変かもしれないけど、きっとこの子と出会ったのは運命だよ。大切にしてあげて?」


雪は頷いて言った。
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