Ending Note
それからママは、以前あたしが病院に来たときに書いた落書きを見せてくれた。
少し色が落ちてしまっているけれど、あたしと虎太郎の似顔絵はしっかりと残っていた。
「看護師さんが体を拭いてくれるんでしょう? もう落ちたかと思ってた」
似顔絵をそっと撫でながら言うと、ママは静かに笑いながら言う。
「ここ……だけね、拭かないで……って……、お願い……してる」
「そっか。そうだよね。消えちゃったら意味ない、」
“消えちゃったら”
自分で言っておきながら、胸がズキズキと痛み出す。
会話の中の節々に、ママがいなくなることを連想させる言葉が出てくると、あたしの胸は痛くなる。
“消える”
“なくなる”
できることなら言いたくないと言葉を選んでいるつもりでも、やっぱり口にしてしまう。