不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…抑制

「いいの?一度触れたら僕、止まれないよ?

僕…

責任なんてこれっぽっち――」


悲しい瞳を揺らしながら言葉を紡ぐ彼…

私は最後まで聞き終わることもなくもう一度彼に唇を覆いかぶせ重ねた。

これ以上何も聞きたくない。

今、彼がここにいる。

その事実だけがあればいい。ここにいるのが感じられればそれでいい。

だからもう言葉なんて…

いらない。

もう言い訳や理屈や謝罪すら…

いらない。

追求したい気持ちはある。でもそれをしたら

どうせ彼はまた手の届かない所にいってしまうのだろう…


触れた唇の感覚を意識するだけで、また涙が瞳の奥から溢れてきた。

今日はもう水分がこれ以上ないくらいに泣いたはずなのに…

それでもまだ無限にわいてくるようだった。


もし、今、水分を全て出し尽くして干からびてもしまってもいい。

それで私が消えてなくなってしまってもいい…

だから今は、今までの私の全てを捨てて、

ただ彼のくれる喜びの全てをこの躰(み)に刻み込んで、

哀しみの全てをただ抱きしめよう。


隔てられた長い時間を埋めようとするかのように

私は本能のままに、目の前の彼をただ求め続けた。


消えてなくならないように…

いなくならないうちに…
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