不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
私は彼の後頭部に掌を回して、その唇を舌先でゆっくりとなぞった。

それから口内に侵入しようと執拗に唇を割り込まそうとする。

夢中になってただ目の前の彼を貪るように求めた…


それなのに私の背中に回っていた両腕が離れたかと思うと、

私の両方の掌は大きな掌に囚われて彼の頭から引きはがされてしまった…

その手を握ったまま、彼が私から一歩後ずさる…

スローモーションで視界に入ってきたその顔の無表情さに

燃え上がったはずの身も心もとたんに凍りつき…

自然と涙が溢れ出た。


再び拒絶されたような気がして…

それが何よりも辛かった。

今、やっと目の前にしたのに拒絶されたら…

もう生きていけない。生きていきたくない…


私は両手を思いきり振りほどいて、さっきより一層強く彼にしがみついた。

この温もりをどれだけ待ち焦がれていたのか。

この胸でどれほど泣きたかったか。

独り寒さに凍え、狂いそうになりながら止まらない涙を零し、

それでも持って行き場のない感情と闘って…

疲れて…

何もかも枯れてしまった…


「…いいの?一度触れたら僕、止まれないよ?

僕…

責任なんてこれっぽっち――」

私は答えを口にせず、もう一度彼の唇を塞いだ。
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