不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…夢中(大希)

俺はふと眠りから覚めた。

暗闇の中、隣りにいるはずのほのかを抱き寄せようと手を伸ばしたが…

指先に触れたほのかの体は小刻みに震えていた。

いつもと違う様子に重たい瞼を持ち上げて、隣のほのかの様子をうかがう…

「うぅ~」

その時低いうなり声と共に眉間にしわが寄り、目じりには光るものが見えて、

うなされているようだった。

胸の中に抱き寄せて躰を撫でてなだめてみたが…

身を固くしたままで、表情も変わらなかった。


もしや、またあの夢なのか?

その存在を忘れるほど久々の感覚に、

目覚めた直後の暖かいはずの躰が、末端から一気に冷たくなる気がした。

ほのかは、今まで色々なものを乗り越え抱えてきた。

そしてそれのいくつかは昇華することができないままで、

トラウマとなりほのかを苦しめていた。

彼女自身は何も悪くないのに…

それでもほのかはそれすらも受け止めていくしかなかった。



俺は意識の中に入り込むようにほのかの掌を取り、そっと指を絡める。

一度だけ…

そうもう一度だけ。

この頃、こんなにうなされることはなかったのに。

もしそうなら、早く手を打たなければほのかがまた壊れてしまう…

長年戒めてきた禁忌を冒す背徳と、事実を知りたい好奇心がないまぜになった。

結局ほのかを守りたいという強い思いが俺の背中を押した。
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