不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…侵蝕

旅行から帰って、いつもの忙しい毎日が続いた。

それなのに、なぜかこの頃少し食欲がない。

最近眠りが浅くなっているので疲れが取れないのだろうか?


多少の体調不調なら、放っておけば治る。

働く母親の私には、子どもや家族に気を配っても、

自分のことにまで気持ちや時間を割く余裕はなかった。


あれ以後あの夢を見ることは運よくなかったが、見るのではないかという不安は

私を徐々に蝕んでいた。

あの夢は…

正直今でも怖い。

たぶんまた私の全てをめちゃくちゃに壊してしまう。


私は彼がいなくなってから狂ったように何年も彼を求め探し続けた。

そんな時、あの時と同じ手紙の悪夢を見始める。

最初は週に1度あるかないかだったが、次第に増え、

いつしかうなされることが多くなった。

その夢を見たくなくてお酒を飲んで寝てしまうことが増えた。

探すこと以上に、その夢に悩まされていた。

いつしか酔っぱらって、夢も見ずにねてしまうことすらかなわなくなった。

飲んでも飲んでも酔えなくなり…

眠れば否定される。目が覚めても現実は辛かった。

そんな不安定な精神状態を隠しながら仕事には何とか行っていた。


人生の闇の淵をなんとか歩いていた。

そして、突然その淵に…

後ろから突き落とされた。
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