不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…密室

ある日、普通残業のない会社だったが、

業務の都合でどうしても私が残らないといけなくなり、

上司と2人で残業することになった。


伝票を切り終えチェックを済ませた私は、ひと段落したので一服しようと思って

休憩室に行った。

自分のマグカップを出して、紅茶を飲もうとお湯を沸かし始める。


ギイー。ドアの開く音にびっくりして振り向くと

「近藤君」

上司が休憩室に入ってきた。

「課長。コーヒー入れましょうか?」

「ああ。頼む」

そう私に告げると課長はドアノブに手をかけた。

私は課長に背を向け、カップを用意しようとしていた。

いつもならドアの開く音がして課長はデスクに戻るのだが…

でも次にしたのはカチャっという音だった。

それはカギをかけた音…

その瞬間ここは密室になった。


課長は私に背を向けたまま


「二人っきりだね」

と、意味深な一言。普段は温厚に見えた上司だったが、その日は違った。

私はコンロの火を止めて、飲み物を用意するふりをしながら

課長から距離を取ろうと後ずさる。

「課長、コーヒーはできたらお持ちしますから、席で座って待っていてください」

何とかこの部屋を出て欲しかった。

この状況が嘘だと思いたくて…

冗談だと言って欲しかった。
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