不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…暗黒

私の手を掴もうと、浅黒い手が伸びてきた。

その時、私は怖くて拒絶しようと手を振り回した。

持っていたインスタントコーヒーが運よく課長めがけてぶちまかれた。

ばさっと頭から被った瞬間、相手がひるんでしりもちをつく。

その隙に課長の横をさっとすり抜けてドアへ駆け寄り、ロックを解除し全速力で走った。


とにかく、課長から…

休憩室から少しでも遠くへと…


私は制服と室内用のスリッパのままだったが、会社にはもう戻らなかった。

その姿のまま30分ぐらい彷徨いながら歩いただろうか。

あるマンションの前についた。

玄関ホールに入り、震える指で何度も間違えながら、

最後に2025の部屋番号をやっと押しきった。

それから、呼び鈴を鳴らす。

しばらく鳴っていた呼び鈴が止まった瞬間、

「そのままそこから動くな!!」ガチャン。

乱暴に切られたインターホンだったが、馴染のある低い声が機械からして、ほっとした。

とたんに足が立たなくなりその場に崩れるようにしゃがみ込んだ。


少しの時間が今日はとてつもなく長く感じる。


早く来て…

私を守って…

エレベータが開いた瞬間、弾かれたように人がこちらに向かってくる。
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