不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…愛撫

私は抱きしめられたまま続けた。

「カウンセリングには今週行って来たの…」

大希さんは私を優しく撫で続ける。

「そうか。先生お元気だったか?少し話して落ち着いた?」

「うん。話したからって、不安が完全になくなるわけではないけど…

でも、先生に会うことで、焦らずぼちぼちやろうと思えるから…

また行ってくるね」

「そうだな。ほのかは、大変な事もあったけど、いい人に巡り会ったよな」

「そう。先生にはいろいろ相談に乗ってもらって、ありがたいよね」

大希さんが撫でていた手を止めた。

腕の中から私を少し離し、両手を握ってこちらの目をのぞきこむ。

さっきと違い少し真剣な空気を纏い、低い声で私を諭す様に言った。

「それから、体調の事…

もうこれ以上は放置するな。

カウンセリングも大事だが、いい加減病院に行け」

「時間が取れるように頑張る」

そう言いながら、どうしたらいいのかわからない自分がいる。

のぞきこまれた視線から少しそらしながら、そつがない返事だけをした。

すると握られた手を離し、私の顎に手が添えられ、優しくではあるが、彼の方に向かされる。

断固とした態度と目が訴える…

彼の空気に負けそうだった。
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