不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
最初から、彼に恋すれば私の現在(いま)はどうなっただろうか?

あんな風に絶望的な喪失感を味わうことも、その後に続いた感情を脅かす

地獄のような時間も知らなくてすんだ?

あの事件の起きた頃には、

見えない、触れることのかなわないものを必死に求め続け、

追い続ける痛みに限界を感じていた。


眞人は確かに大切だし、どうしても忘れられない。

たぶんその気持ちは、一生忘れきれないかもしれない。

でも、私のそばにいるのは、彼ではなく大希さんだ。

そして、こんなに大切にしてくれる。

彼の抱擁の心地よさに、その絶対的な安心感に本当に少しずつ、

段々ではあるが気持ちが傾いていった。


長い長い時間友達でいてくれて、恋人になり、夫になって、父親になった。

そして、現在に至るまで、大希さんは私のそばで私を守ってくれ続けている。

彼はある意味変わったが、根本的な部分では何も変わらない。

私に必要なのは、絶対的に変わらない安心感を基盤にした上での少しの変化。


私は大希さんにベクトルを変えてからも多くの辛いことを経験したが、

それを彼と一緒なら乗り越えられるということを学んだ。
< 45 / 130 >

この作品をシェア

pagetop