不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…心残(大希)

『「そうだ。俺は勝手な奴さ」』

単なる心の言葉に答えが返ってきて目を見開く。

あり得ないことが起こって、自分の目をこすってもう一度天井を見つめた。

何もない。ほのかは腕の中で規則的な息を吐いている。

心を読むことはあっても、会話の様な事をしたことは一度もなかった。


『「眞人か?眞人なのか?」』

確信が持てないまま、呼びかけてみる。

『「この前僕の声をほうちゃんから聞いたでしょ?

その気になればこのくらいの事はできるんだよ僕」』

また返事が返ってきた。

俺は、眞人の視線をどこかから感じつつも、腕の中のほのかの髪に

軽く口づけてから、そっと頭を枕に下しベッドを抜け出した。


そのまま、ベッドルームのライティングデスクの椅子に腰かける。

『「何だよお前。じゃ、今まで聞こえてても答えなかっただけだったのか?」』

『「そうだよ。完全に姿を消すのに、答えたらバカじゃん」』

『「今だって姿消してるのになんで答えんだよ」』

『「どうしてもお前に伝えたいことがあったから…」』

『「あれだけほのかをほったらかしておいて…

今更なんだ?」』


『「子ども…

男だから。名前は慈希(いつき)にして」』
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