不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
彼女は久々俺の腕の中で静かに眠っている。

その腕の重さが愛おしかった。


長い間叶わなかった思い。無論重なることがあるわけもない躰。

だから俺はほのかを何度抱いても心がここにあらずになってしまう。

その時は夢中でも、目覚めたらそれが夢だったとかになるんじゃじゃないかと

不安に苛まれる。


この頃、どこかほのかと気持ちの行き来が疎遠だった。

抱きしめることはあっても、一緒のベッドに寝ていてもどこか距離を感じていた。


おそらく治療の事に反対したことが原因だったのだろうが…

意見のすれ違いは仕方がない。同じ人間でない以上何らかの相違はある。

それでもほのかを愛おしい気持ちは、ずっと…

変わらない。


ただ心が通じ合って親密な雰囲気になるのは、やっぱり気恥ずかしかった。

『子どもかぁ。ほのかの子どもならどちらでもかわいいだろう…

でも気を付けてやらないと身体がきつくなると精神的に不安定になりやすいし。

あの夢を見続けるようになったら…

それこそ手が付けられなくなってしまう。


20年前のたった数年の事なのに、どうしてこんなにもほのかを…

眞人、お前はなんて残酷な奴なんだ。

いつまでほのかを苦しめるんだ?本当に勝手な奴だったよな』
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