不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…兄弟(瑞希)

僕が6歳の年、
母が赤ちゃんを産んだ。
慈希と名づけられた赤ちゃん。

母によく似た彼は、
とてもかわいかった。

母は僕以上に高齢で望んでできた
息子の慈希を溺愛した。

仕事先に無理をお願いして
1歳まで育休を取り、
母乳が離れるまで、どこへでも
慈希を連れて行った。

慈希も何も問題もなく
すくすくと育った。

微笑むと周りを蕩けさせる
愛嬌のある赤ちゃんだった。


だが、3歳を過ぎたころから、
雰囲気がガラッと変わった。
一言でいえば不思議な弟になった。

表面上はわがまま放題の慈希に
みんなが手を焼くという
典型的な末っ子。

人の前ではそんな感じだったのに、
なぜか父と僕に対する態度だけが
キツくなった。

まだまだ子どもなので、
母を独り占めしたいだけだと
最初は思っていた。

僕も苦労して僕を産んで
育ててくれた母は大好きで
大切にしたいと思っていた。

でも、時間が経つにしたがって、
どうもそんな単純なことで
説明できない何かが、
母と慈希の間にはあるのではないか
という気がした。


弟なのに、時に年上の様な
言動をする慈希が怖いと
思うことがあった。
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