オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
「ハルさん、こいつ借りていいですか?」
突然聞こえた卓人さんの低くて無愛想な声。
だけどそれが、今は天の声のように聞こえる。
「え?ええ…いいわよ」
「行くぞ」
そう言って、卓人さんは私の手首を掴むと引きずるように私を備品室に連れて行った。
窓がないため、相変わらず薄暗い室内。
気のせいか、いつもより空気がじめっとしている。
「卓人さん…?」
「……」
「また掃除してればいいですか?」
前も同じようなことがあった。
遣都さんに彼女がいるって知った時、卓人さんは気を遣って“ここの掃除でもしてろ”って言ってくれたんだよね。
「ホント馬鹿ですよね、私。彼女いる人に一目惚れなんかして…」
好きになって間もないのに失恋なんて、笑えるよね…