甘党
ス キ ノ イ ミ
桜がヒラヒラと散っていく
それはまるで

蝶のように

ちいさいけれど

美しく

綺麗に

舞っていた。






1章 スキノイミ







3年C組。

美藤 恋華。【ビトウレンカ】

肩につくくらいの髪が自慢の少女。
成績トップで親友の 友香 【トモカ】ともうまくいっている。
…だが。1つ。
うまくいっていない事がある。


それは『恋愛』だ。


高校生にしてまだ初恋をしたことがなかったのだから驚きだ。
別に彼氏とか興味ないし、いい人いないし…。

そう言って強がる毎日。



「ありがとうございました〜。」
満弁の笑みで客を送り出す。ここは花屋。
お母さんのお友達が金欠な私をここで雇ってくれた。
つまりアルバイト。
『お疲れ様でーす。』
時計を見ると6時を指していた。
私の仕事終了時間は7時だからあと1時間もある。
注文されてる花をラッピングしてー、花束を綺麗に手入れしてー…
『恋華ちゃん。今日はあがって良いわよ。』
一緒に働いていた 加奈子 【カナコ】さんが花を運びながら私に話しかけた。
「えっ!?だって私、今日残業するって言ったじゃないですか!?」
恋華は妄想の世界から現実へ引き戻される。
そして「あいつ」の顏が頭をよぎった……。
『彼、2時間前から来てるのよ。まだ春って言っても冷え込むでしょ?』
やっぱりそうだった。
「いいですよ。あんな奴。私は残業します。」
頑張って否定したけれど大人は一枚上手だ。
『昨日もそんなこと言ってたけどずっとまってたのよ。最近あの子、風邪気味みたいだし…。』
優しい言葉だけど裏では『行け』というオーラが出ている。
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