結婚の賞味期限 人生の消費期限【完】
そんな時、ほんの一瞬だけ、視線が義弟の慈希さんと絡み合う。


この人は何者なんだろう?みずき君とは明らかに違う…

その瞳の奥に、見たことのある色を見つけて動揺した。

私も以前そういう目をしていたと思う…

絶望を知る色の瞳。


弟がいることは聞いていたが、みずき君はあまり多くを語ろうとはしない。

話したがらないことを聞くのも酷だと思って別段気にしないことにしていた。


それなのに、こんな席にもかかわらず

一瞬だけで囚われそうになるその黒い瞳が、心底怖いと思った。

それになんでお義母さん達と控室に行かないんだろう…

里帰りは久々のはずなのに、親子水入らずになりたがらないんだろうか?

それは私にとっては不思議なことだった。


実は、式の時にはお義母さんとお義父さんも参列してくれていたが、

今二人は別室で食事をしている。みずき君の話によると、

お義母さんは大勢の人がいるところに長時間いると酔って疲れが激しく、

寝込んでしまうらしい。


お義母さん自身は、今回の式と披露宴の話をするとすごく喜んでくれ、

全部参加するといった。

でも、日常を知るお義父さんが、最低限以外は

別室に休憩室を用意してもらって

その日の体調で無理をしないほうがいいと助言してくれ、

実際に今その休憩室にいる。

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