結婚の賞味期限 人生の消費期限【完】
久々社内を案内し終わって一人になった私はため息をついた。


この職場は、思い出が多すぎる…

それはもちろんみずき君のものでもあるけれど…

あの人と共に働いた職場でもあったから…


誘惑された給湯室。告白した駐車場。

離婚調停中で思いの届くことのないあの人を末席から眺めているだけで、

ドキドキしたこともあった…

関係が深くなってからは、すれ違うたびに、その香りを鼻にするたびに、

躰が疼くのを押さえるのがやっとの時もあった…


私は今幸せなのに…

どうしてこういうことを考えているのだろうか?


何かが満たされていないから?それとも私の躰が不実だから?

でも、なによりみずき君との関係が安定的で落ち着いているからこそ、

刺激が足りないから?


私は首を何度も振って、そんな憂鬱な思いを振り払おうとした。


今までにこれほどの幸せはあった?

私を大切にしてくれる旦那様と3人の子どもと不自由なく暮らせる。

旦那様は連れ子の娘達とも親子の様に関わろうと努力してくれていて…

こんなに理想的な生活は憧れても私には手に入らないと思っていた。


そんなものが今、私の手の中にある。

愛してくれる人の腕の中に安心して抱かれていれば、

もう何も不安なんて感じないはずだろうに…


なんて私はわがままで贅沢なのだろうか…
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