腕時計


やっとプレゼントが決まり、ラッピングしてもらった小さな箱が紙袋に収められる。
俊弥は、それを大事そうに手に提げ満足そうに笑っている。

私のために、その笑顔してくれないかな……。

少しの欲が顔を出し、すぐにしぼんでいく。



「お茶でもすっか」

弾む足取りの俊弥は、近くのカフェに足を向けた。

混んだ店内で席を確保し、好きなもの頼んで良いぞ。と私にメニューを渡す。
お礼に何でも奢ってやる。と気前のいい事を言いながら。

「じゃあ。ここに載ってるケーキ全部」

わりと真剣な顔でそう言ったら、ふざけんな。って笑いながらおでこを突かれ、トクンと一つ心臓が反応し、そのあとには心がくすぐったくなった。

こんな些細な事を、嬉しいと感じている自分は可愛いと思う。



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