毒舌に惑わされて
腹筋…忘れていた。確実に今食べている肉は私の肉になる。特にお腹周りにくっつく。


「美味しく食べているのに嫌なことを思い出させないでよ」


本当に意地悪な男だ。


「莉乃ちゃんは太っていないよ。健康的でいいと思うよ」


「そうよ、莉乃。健康的に見えるのが一番なんだからねー。私なんて、もう少し肉をつけたいわ」


スレンダーな友だちとスレンダーな奥さんを持つ男が言う言葉は説得力がなくて、苦笑いしてしまう。


「まあ、莉乃の抱き心地は良いから、大丈夫だ」


聖也が肩をポンポンと叩く。それもまた何ともいえない慰め方だ。

自分の体が細くはないのは自覚している。たまには「細いね」なんて言われたいものだ。

今夜から腹筋だけでも欠かさずにやろうと心の中で誓った。


お腹いっぱいになって食べ終わってもみんな椅子に座ったまま動かない。


「気持ち良い風ねー」


椅子にもたれて、爽やかな風に当たる。
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