毒舌に惑わされて
「じゃあ、2人で一緒に来ればいいよ」


「そうよ。それが一番よ!」


マスターの言葉に手を叩いて、葉月が同意する。


「ええ!」


「何だよ?俺とじゃ、不満なわけ?」


「聖也は…一緒に行きたいの?」


「別に構わないけど」


そう言って、微笑むから、心臓がドキン!と跳ねた。

そんな笑顔を不意打ちで見せられたら……落ちてしまう!



「フフッ、実はそんなに遠い話ではないのよ……」


いつの間にか2人の店の話は進んでいて、今は場所を探しているところらしい。2人の夢は現実に近付いていた。


夕食後、聖也は翌朝早くから出掛ける用事があるからと帰って行った。

マスターは『fantasy』が忙しいらしく呼び出された。

残った私と葉月は布団を並べて寝る。


「こうやって寝るの久しぶりだよね。今度うちにも泊まりに来て」


共通の友人の話から始まり、昔の男の話、仕事の話、店の話と私たちのお喋りは何時間も続いた。

本音を話せる友だちはそんなに多くない。その中で葉月はおばあちゃんになるまで付き合いたい友だちだ。


「聖也と仲良くしてね…」


呟くように言って、葉月は先に寝た。

聖也ね……関われば関わるほど謎だな。



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