毒舌に惑わされて
野村くんからあと1時間くらいかかると連絡がきた。急ぐこともないので、夜景を眺めながら待つ。

ふと誰かが座った気配がして、前に視線を移す。


「ちょっと!」


「何だよ?」


「何でそこに座るのよ?」


「空いていたから」


前に座ったのは、仕事帰りらしいスーツ姿の聖也だった。
空いていたからと断りもなく座るのは間違っていると思う。


「そこ、人が来るから退いて」


「誰が来るの?そういえば、大倉さんを振ったんだって」


「何で知ってるのよ?」


「この前、ここで聞いた」


あれから大倉くんとは一度も会っていない。『fantasy』で会ったら、飲もうと話していたけど、私が今日まで来なかったこともあって偶然会うこともなかった。


「いいから、退きなさいよ」


「遊園地デートしてた男が来るの?」


「そうよ」


「アイツと付き合うことになった?」


「ううん、まだ。聖也には関係ないことでしょ?」


付き合うかどうかも決めてないし、返事もしてない。
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