毒舌に惑わされて
聖也は、何も言わないでただ私の話を聞いてくれていた。


「…彼女から今夜だけでいいから、慰めて欲しいと言われて…同情か友情か分からないけど、断り切れなかったんだって。あたしに交際を申し込んでいる身なのに、そんなことになってしまってすいませんって、謝ってきた」


野村くんに話を聞かされた時、どう答えていいか分からなかった。まだ野村くんを観察中の段階だったし、私が早くに結論を出さなかったのもいけないと思うから。


「でも、それでどうして振られたことになる? 莉乃は過ぎたことは気にしないんじゃなかった?」


「そうなんだけど……」


そう、私は気にしないし、大変だったねと話した。

だけど、野村くんの心は少しその彼女に向いているように感じた。


「そんな中途半端な状態だから、交際を申し込める立場じゃないって。取り消しさせて欲しいと言われたの」


野村くんが今、誰を好きなのか分からなかった。でも、私への気持ちは薄れて来ている様子だった。同情だか友情だか分からなくても、それが愛情に変わることだってある。
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