毒舌に惑わされて
「もうすぐ着くから、待ってろ。着いたら、水でも飲んで落ち着けよ」


気付いたら、もうマンションが目の前だった。


「も、もう近いし、ちゃんと歩けるから大丈夫だよ。降ろしてくれない?」


「ダメだ。そんな真っ赤な顔して。普通の状態とは思えない。大人しく掴まっていろよ」


真っ赤な顔。そうではないかと分かってはいたけど、指摘されると恥ずかしい。

私は黙り込んで、大人しく運ばれた。


「莉乃、鍵は?」


「バッグの中に…」


抱っこされたままの状態で鍵を開けた。

狭いリビングにある小さいソファーにそっと置かれた。


「水持ってくるから、待ってろよ」


「うん。…えっ?」


おでこにキスを落とされて、目玉が飛び出そうなくらいびっくりした。

聖也は、冷蔵庫からペットボトルに入ったミネラルウォーターを出して、渡してくれた。受け取って、一気に半分空けた。


「フッ、そんなに喉渇いていた?俺もだけどね」


聖也は私の手からペットボトルを奪って、残りを飲み干す。
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