毒舌に惑わされて
そして、20分後、超特急で全ての支度が終わった。汗を流してさっぱりして、サラッとした服に着替え、ザッとメイクをした。


「お待たせ」


聖也は目の前に立つ私を上から下までしっかり見て、テレビを消す。


「結局、6時には出れなかったな。俺、時間通りに動けないの嫌いなんだけど」


時間が遅れてしまったのは私のせいであるけど、必ずしもそれだけが原因とは言えない。

大倉くんと戻って来た時にすぐ部屋に戻っていれば間に合ったはずだもの。

いきなり聖也が現れて、大倉くんと揉めるからいけない。それよりも予定時間より30分も早く来る聖也が一番いけない。

時間に正確だというけど、早いのも正確とはいえないと思う。

そんな風に文句を言いたいのに、何故だか聖也の前では、小心者になってしまう自分がいる。何も言えず、おとなしくしていた。

そんな嫌な空気の中、葉月の家に到着した。


「莉乃、おそーい」


「葉月、ごめんねー」


ここで揉めるのは嫌だから、穏便に謝っておく。
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