毒舌に惑わされて
「終わったー!」


時計を見ると9時になるところだった。


「終わりました?帰りましょうか?」


「あれ?もしかして待っていてくれたの?」


「どこか寄って行きませんか?」


エレベーター内で野村くんに誘われるが、今日は疲れているから、出来ることならこのまま帰りたい。


「ごめんねー。今日は家に帰って休みたいんだ」


体が若くない。以前だったら、絶対にお誘いを受けているはずだけど、今は早く帰って、横になりたい。


「そうですか…」


「明日、飲みに行こうか?」


「本当ですか?」


何となくしょんぼりする野村くんが可哀想になってしまって、思わず提案してしまう。

暗くなった顔が一気に明るくなったので、笑ってしまう。私なんかと飲みに行っても楽しくないとは思うけど、バカ話で盛り上げようかな。


「あ、でも…彼女とデートじゃない? 金曜日だし。大丈夫?」


「大丈夫です!相談があるので、ぜひ明日聞いてくださいね」
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