毒舌に惑わされて
翌日の金曜日は、今日1日頑張れば休みになるという気持ちで自分を励まし、課長から頼まれた細かくて面倒な仕事でも快く引き受けた。

気付けば、何でこんな面倒なことやっているんだ?と思ったけど。


「安藤さん、俺終わりましたけど、終わりそうですか?」


「うん。あと10分で終わると思うから待っていてくれる?」


「了解です」


金曜日は誰もが早く帰りたいと願うから、みんな時間を気にしながら必死に取り組んでいる。

私語なんて全く聞こえなくて、真剣な様子が伝わっていた。もちろん私だって、早く帰りたいから真剣である。


きっちり10分後に終わらせて、野村くんと一緒にオフィスを出る。


「安藤さん、週末はバーに行ってるって言ってましたよね? そこ連れて行ってください」


「えっ? でも、あまりお腹にたまるものないよ」


「いいですよ。食べ物は少しあれば大丈夫です」


そんないきさつでやってきた『fantasy』。週末はここで過ごすのが習慣になっているけど、後輩と入るのは何となく気恥ずかしい。
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