毒舌に惑わされて
「聖也こそ用事があったんじゃないの?」


「用事が終わったから来た。莉乃、ほんと暇人だよな」


「聖也、今日は悪かったな。サンキュー。これ、お礼な」


私の隣に座った聖也に、マスターがカクテルを出した。


聖也の用事はマスター絡みのようだ。姉の旦那の頼みはよく聞くみたいだ。

どんな男かいまだに謎な部分がある。


「何だよ?」


「ううん、別に…」


つい観察するかのように見てしまった。


*****


「聖也がどんな男かって?あいつは単純な男よ。ちょっとわがままだけどね」


数日後、たまたま近くに来たという葉月から連絡があって、会社隣りのカフェでランチを一緒にとった。

姉である葉月に聖也のことを聞いてみる。身内だから、一応悪く言わないように気をつけながら。


「単純?」


分かりにくい男だと思っていたから、単純と聞かされて、疑問に思った。あれが単純なのだろうか。
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