毒舌に惑わされて
野村くんは意味深な表情で笑った。


「でも、安藤さんに俺の下心を見せようかなー」


「えっ?」


「お腹いっぱいになりましたよね? 出ましょうか」


素早く席を立って、会計を済ませる野村くんの後に続いて焼き鳥屋さんを出ると「俺の家に行きましょう」と微笑んで、タクシーを止めた。

ちょっと、待って。この展開は何?


「はい、乗って」


呆然としている暇もなく、タクシーに乗せられて、あれよあれよという間に野村くんが住んでいるマンションの前に着いた。


「あれ?野村くんって、実家から通っているんじゃなかったの?」


「去年から一人暮らしを始めたんですよ。一人は快適でいいですよね」


「うん、あたしもそう思う」


違う!

こんなことに共感している場合ではない。今、聞くべきことはこの状況だ。何でここにいるのかだ。


「野村くん」


「はい? 俺の部屋は7階です。行きましょう」


今、気付いたけど、私の手は野村くんの手と繋がっていた。いつの間に手を繋いでいた?


「莉乃!」


えっ?
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