時猫





目の前のフラフープが光り、中に映像が流れ始めた。

いきなりガシャンっ!と物音がする。

音源はもちろん、フラフープから。

真っ暗な室内。

そこに、誰かの叫び声と、カキンッと刀のぶつかる音──

そして、


『…俺の言う事を素直に聞けば、こうはならなかったんだ。…分かったか』

『……よくも、父上と母上を…っ』


男は、スッと刀を鞘に収める。

不敵に笑うと、


『…俺は、壬生浪士組筆頭局長、芹沢鴨だ。復讐したくば、いつでも来い。待ってるからな』


踵を返して、外に出た。

部屋に残った一人の女は、もう二度と動かない、自分の親に近付く。


『父上、母上…っ』


うわあぁ…と、泣き声が響いた。




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