恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
私が食事の用意をしている間、

彼は娘のままごとや、お人形遊びに付き合い、

父親役を押し付けられても嫌な顔一つせず、心から楽しそうだった。

食事ができると、みんなでご飯を食べて一緒にTVを見て

9時過ぎに帰っていく。

それはまるで、離婚した父親のおうち訪問のような奇妙な

関係だった。

うちの元旦那は、離婚する前に家を出たっきり娘たちに

会うことは1度もなかった。

離婚調停の時も会うことを望まず、面会の機会を

設けることにはならなかった。

彼女達が小さいころに受けた暴力は

取りあえずは表面上影響がなかったかのようには見える。

しかし、何かしらこの子達の深層心理に傷を残しているだろうが…

私は今の事に手一杯で、我が家の闇であるその部分に踏み込めずにいた。

だから、この家に…

男を連れ込む(厳密には娘たちが招いたのだが…)ことは一度もなかった。


娘たちは、家に初めて来る男性のみっちゃんに興味津々で、

彼が里帰りした翌週末の訪問の後、


「お母さん、この人とつきあってるの?」

そんなませたことを言ってきた。

彼は、私の家にきてはいたが娘たちに会いに来ているように見えた。
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